先日、プロ選手が体験トレーニングに来てくれました。
課題として挙がっていたのは、フットワークの重さ、ディフェンス時のブレ、コンタクト時の弱さ、股関節の使いづらさ、肩の痛み、足首の硬さ。
普段からビッグ3を中心に高重量トレーニングを行っていて、身体も大きく、筋力もある選手です。
本人の目標は、身体を大きくしながら、もっと跳べるようになること。
そして、外国人選手にも負けないコンタクトの強さを身につけること。
ただ実際に身体を見ていくと、単純な筋力不足ではなく、もっと根本的な問題が見えてきました。
足首が硬い。
肩関節のモビリティが低い。
胸椎の伸展・回旋が硬い。
インナーユニットが入りにくい。
前鋸筋や下部僧帽筋が弱い。
アウターの筋肉が固まっている。
スクワットも踵を上げないと深くしゃがめない。
姿勢は巻き肩が強い。
つまり、筋力はある。
でも、その筋力がコート上の動きにうまく変換されていない。
今回の記事では、この選手の身体がなぜ大きく変わったのかを、セッションレポートとしてまとめます。
選手にも、指導者にも、トレーナーにも読んでほしい内容です。
今回行った内容
今回のセッションで行ったのは、重い筋トレではありません。
行った内容は、主に以下のようなエクササイズです。
1.椅子に座って胸椎伸展を出すエクササイズ
2.仰向けで大腰筋を押してアクティベートするエクササイズ
3.呼吸トレーニングによるインナーユニットの活性化
4.コモドストレッチ
5.ダウンドッグストレッチ
これらを行った後、ディフェンスの細かいステップや、コンタクト時の安定感が明らかに変わりました。
本人も変化を感じていました。
ただ同時に、こんな疑問も出てきました。
・なぜ胸椎を伸展すると、こんなに動きが軽くなるのか?
・なぜ股関節まで使いやすくなるのか?
・なぜヒンジのエクササイズをしていないのに、ヒンジができるようになるのか?
この疑問は、かなり本質的です。
そして、この疑問に答えられるかどうかが、選手から信頼される指導者になれるかどうかの分かれ目だと思います。
結論:筋力が上がったのではなく、力の通り道が整った
今回の変化を一言で表すなら、こうです。
筋力が急に上がったのではなく、力の通り道が整った。
この選手は、もともと筋力がないわけではありません。
むしろ、普段からビッグ3、ピンスクワット、レッグプレス、懸垂、ベンチプレス、ラットプル、フライ、クリーン、ハイプルなどを行っていて、出力そのものはかなりある。
でも、身体の中で力がうまく流れていなかった。
胸椎が硬い。
呼吸が浅い。
肋骨が動かない。
骨盤が安定しない。
股関節が詰まる。
足首が硬い。
肩甲骨が動かない。
首肩が固まる。
この状態では、いくら筋力があっても、その力がプレー動作に変換されにくくなります。
車で例えるなら、エンジンは大きい。
でも、シャーシが歪んでいて、サスペンションが固まり、ハンドルも重い状態です。
その状態でアクセルを踏んでも、速く・軽く・安定して動けるとは限りません。
今回行ったエクササイズは、エンジンを大きくしたわけではありません。
身体の中で起きていた力の渋滞を整理し、
持っている筋力をコート上で使える状態に戻した。
だから、動きが大きく変わりました。
なぜ胸椎伸展で股関節が使えるのか
なぜ胸椎伸展で股関節が使いやすくなったのか。
今回、本人が一番不思議に感じていたのがここでした。
胸椎を伸ばしただけで、なぜ股関節が使いやすくなるのか?
胸椎と股関節は、場所だけ見れば離れています。
だから、一見すると関係がなさそうに見える。
でも、身体はパーツごとにバラバラで動いているわけではありません。
胸椎、肋骨、横隔膜、骨盤、股関節は、すべて連動しています。
特にバスケットボールのように、走る、止まる、跳ぶ、当たる、切り返す、打つ、守るという動作が連続するスポーツでは、このつながりが非常に重要です。
胸椎が硬いと、股関節は使いにくくなる
胸椎が硬い選手に多いのは、以下のような状態です。
背中が丸い
巻き肩が強い
肋骨が潰れている
呼吸が浅い
首肩が固まっている
胸を張ろうとすると腰で反る
骨盤が前傾または後傾に偏る
股関節が詰まる
この状態では、股関節を使おうとしても、そもそも股関節が自由に動ける環境がありません。
股関節は、骨盤についている関節です。
つまり、骨盤が安定していなければ、股関節は自由に動けません。
そして骨盤は、肋骨や胸郭の影響を大きく受けます。
胸椎が動かない。
肋骨が動かない。
呼吸が浅い。
横隔膜が働きにくい。
腹圧が入りにくい。
骨盤が安定しない。
股関節が使いにくい。
この流れが起きます。
つまり、胸椎が硬い選手は、股関節が硬いから股関節が使えないのではなく、胸郭と骨盤の関係が崩れているせいで股関節が使いにくくなっていることがあります。
胸椎伸展で起きた変化
今回、椅子に座って胸椎伸展を出すエクササイズを行いました。
これによって、背中がただ反れるようになったのではありません。
胸椎が動く。
肋骨が動く。
横隔膜が働きやすくなる。
腹圧が入りやすくなる。
骨盤が安定する。
股関節が動きやすくなる。
この流れが起きたと考えられます。
特にこの選手は、巻き肩が強く、肩甲骨の動きも悪く、首肩の緊張も強かった。
この状態では、上半身が常にブレーキをかけています。
胸椎が少し動くようになるだけで、首肩の余計な緊張が落ち、胸郭が広がり、呼吸が入り、体幹の安定感が変わります。
そして体幹が安定すると、股関節はようやく「動く関節」として働き始めます。

なぜヒンジをしていないのに、ヒンジができるようになったのか
これも今回の大きなポイントでした。
本人は普段、片足ヒンジのエクササイズなども行っているそうです。
にもかかわらず、今回のセッションではヒンジ系のエクササイズをメインでやっていないのに、自然にヒンジが出るようになりました。
これはなぜか。
答えはシンプルです。
ヒンジを練習したからヒンジができたのではなく、ヒンジを邪魔していたロックが外れたからです。
ヒンジは「お尻を引く動き」ではない
ヒンジというと、多くの人は「お尻を後ろに引く動き」と考えます。
もちろん見た目としてはそうです。
しかし、本質はそれだけではありません。
ヒンジとは、
体幹を安定させたまま、股関節を折りたたみ、床からの力を股関節で受け取る能力
です。
つまりヒンジには、股関節だけでなく、以下の要素が必要です。
胸椎の可動性
肋骨と骨盤の位置関係
呼吸
腹圧
骨盤の安定
股関節の屈曲
ハムストリングスと臀筋の張力
足首の可動性
足裏の接地感
首肩の余計な緊張の少なさ
これらが整っていない状態でヒンジだけ練習すると、選手は股関節ではなく別の場所で代償します。
腰で固める。
首肩で力む。
もも前で踏ん張る。
足裏が外に逃げる。
ハムストリングスをただ伸ばして耐える。
股関節に乗っているようで、実際は腰と外側の筋肉で支えている。
こうなると、ヒンジをやればやるほど動きが重くなります。
なぜ今回はヒンジが出たのか
今回のセッションでは、ヒンジの前提条件が整いました。
胸椎伸展で胸郭が動いた。
呼吸で腹圧が入りやすくなった。
大腰筋のアクティベートで脚を身体の下に回収しやすくなった。
コモドストレッチで股関節周囲の過緊張が落ちた。
ダウンドッグで足首、ハム、広背筋、肩甲帯のつながりが出た。
この結果、身体は股関節を使いやすい状態になりました。
だから、ヒンジを直接練習していなくても、自然にヒンジが出た。
これは新しい能力を足したというより、
もともと持っていた能力を邪魔していたブレーキが外れた状態です。

胸椎伸展がディフェンスステップを軽くした理由
ディフェンスの細かいステップは、足だけの問題ではありません。
もちろん足の速さ、筋力、瞬発力は大事です。
でも、プロレベルで大事なのは、もっと細かい部分です。
頭、胸郭、骨盤がブレずに、股関節と足部が細かく反応できること。
これがディフェンスフットワークの質を大きく左右します。
胸椎が硬いと、足だけで頑張る
胸椎が硬い選手は、ディフェンス姿勢に入ったときに上半身が固まりやすくなります。
すると、次のような状態になります。
肩が上がる
首が詰まる
肋骨が開く
腰が反る
骨盤が遅れる
股関節の切り返しが遅れる
足だけでステップする
接地が重くなる
切り返しでブレる
この状態では、どれだけ脚力があってもフットワークは重くなります。
なぜなら、足が遅いのではなく、上半身と骨盤のズレを足が毎回補正しなければいけないからです。
身体の上がブレる。
骨盤が遅れる。
足がそれを修正する。
だから足が忙しくなる。
結果、ステップが重く見える。
こういう選手は多いです。
胸椎が動くと、足が余計な補正をしなくてよくなる
今回、胸椎伸展と呼吸によって胸郭の動きが出ました。
それによって、肋骨と骨盤の位置関係が整い、体幹が安定しやすくなりました。
すると、ディフェンス姿勢で上半身が暴れにくくなります。
上半身が安定する。
骨盤が足の上に乗る。
股関節が内外旋しやすくなる。
足が身体の下に戻る。
切り返しが軽くなる。
つまり、胸椎が動いたから足が速くなったのではありません。
胸郭と骨盤のズレが減ったことで、足が余計な補正をしなくてよくなった。
だから、ステップが軽くなった。
これはディフェンスにおいて非常に重要な考え方です。
呼吸トレーニングでコンタクトが強くなった理由
今回、呼吸トレーニングによってインナーユニットを活性化しました。
ここで大切なのは、呼吸を「リラックスのため」だけに捉えないことです。
バスケットボールにおける呼吸は、パフォーマンスに直結します。
特にコンタクトでは、呼吸と腹圧が非常に重要です。
コンタクトに必要なのは、ただ固める力ではない
コンタクトが強い選手は、身体をガチガチに固めているわけではありません。
本当に強い選手は、当たられても潰れず、でも次の動きに移れる状態を保っています。
つまり、必要なのは、
動きながら支える体幹
です。
高重量トレーニングでは、腹圧を固めて一方向に耐える場面が多いです。
スクワットで潰れない。
デッドリフトで腰を守る。
ベンチで身体を固定する。
これは非常に大事です。
ただ、バスケのコンタクトでは少し違います。
バスケでは、
呼吸しながら
動きながら
片脚で支えながら
相手に当たられながら
方向転換しながら
次のプレーを選びながら
体幹を保つ必要があります。
つまり、固める体幹だけでは足りません。
動きながら支える体幹が必要です。
呼吸で腹圧が入ると、当たっても潰れにくくなる
呼吸トレーニングによって横隔膜が働きやすくなると、腹圧が入りやすくなります。
腹圧が入ると、肋骨と骨盤の間に安定感が生まれます。
この状態になると、相手に当たられたときに、
胸だけ押される
腰が反る
骨盤が流れる
膝が逃げる
足裏の圧が抜ける
といった崩れが起きにくくなります。
コンタクトで大事なのは、筋肉を大きくすることだけではありません。
相手の力を身体全体で受け止め、地面へ逃がし、次の動きへ変換することです。
そのためには、呼吸と腹圧が欠かせません。

大きい選手ほど、筋力や体重に頼りがちです。
でも、姿勢が崩れていれば、小さい相手に下から押し上げられることがあります。
コンタクトは筋力だけではなく、姿勢と圧の勝負でもあります。
なぜ呼吸と大腰筋でステップ・コンタクトが変わるのか
今回、仰向けで大腰筋を押してアクティベートするエクササイズを行いました。
大腰筋は、一般的には「脚を上げる筋肉」として知られています。
もちろん股関節屈曲に関わる筋肉です。
ただ、バスケットボールにおいて大腰筋を「脚を上げる筋肉」だけで説明すると、かなりもったいない。
大腰筋は、脚を上げるだけではなく、骨盤や腰椎の位置、脚の回収、ステップの切り返しに関わります。
大腰筋は「脚を戻す」筋肉として考える
ディフェンスステップが重い選手は、足を出すことはできても、足を戻すのが遅いことがあります。
横に出した足が流れる。
一歩目は出るけど、次の一歩が遅れる。
ステップした後に骨盤が残る。
切り返しで足が外に逃げる。
こういう状態です。
ここで大事なのが、大腰筋の働きです。
大腰筋がうまく働くと、脚を身体の下に回収しやすくなります。
ディフェンスでは「出す力」より「戻す力」が重要
フットワークというと、どうしても「速く足を出す」ことに意識が向きます。
でも、実際には足を出すこと以上に、戻すことが大切です。
足を出す。
床を捉える。
身体を支える。
脚を回収する。
次の方向へ動く。
この「回収」が遅いと、ディフェンスは重くなります。
大腰筋が働きやすくなると、脚が身体の下に戻りやすくなり、骨盤が流れにくくなります。
だから、切り返しが軽くなる。
細かいステップが出やすくなる。
コンタクト後のリカバリーも速くなる。

コモドストレッチとダウンドッグが効いた理由
今回行ったコモドストレッチとダウンドッグも、かなり重要でした。
これらは単なる柔軟性向上のためのストレッチではありません。
この選手にとっては、股関節、足首、肩甲帯、胸郭のつながりを取り戻すためのエクササイズでした。
コモドストレッチで股関節周囲のロックを外す
コモドストレッチでは、肩甲骨、股関節の外旋、内転筋、骨盤周囲に刺激が入ります。
ディフェンス姿勢やコンタクトでは、股関節の屈曲だけでなく、内旋・外旋の自由度が必要です。
股関節が前後にしか動かない選手は、横の動きや切り返しが重くなります。
コモドストレッチによって肩甲骨・股関節周囲の過緊張が落ちると、
肩甲骨の稼働性向上
骨盤が股関節の上で動きやすくなる
内転筋の防御収縮が抜ける
股関節の回旋が出る
ディフェンススタンスで膝が暴れにくくなる
サイドステップで足が引っかかりにくくなる
といった変化が出やすくなります。
ダウンドッグは足首・ハム・広背筋・肩甲帯をつなげる
ダウンドッグは、ただのハムストリングスやふくらはぎのストレッチではありません。
今回の選手にとっては、
足関節背屈
ハムストリングス
腓腹筋・ヒラメ筋
広背筋
胸椎伸展
肩甲骨上方回旋
前鋸筋
体幹と四肢の連動
に対するアプローチになっていたと考えられます。
特にこの選手は、足首が硬く、肩関節のモビリティも低く、巻き肩が強い状態でした。
このような選手にとって、ダウンドッグはかなり有効です。
手で床を押す。
肩甲骨が動く。
背中が伸びる。
胸郭が広がる。
ハムとふくらはぎが伸びる。
足裏で床を感じる。
つまり、足から手までのつながりを再教育できます。
ビッグ3中心の筋トレで、なぜ動きが重くなることがあるのか
ここは誤解してほしくないのですが、ビッグ3が悪いわけではありません。
スクワット、ベンチプレス、デッドリフトは、身体づくりにおいて非常に有効です。
高重量を扱うことも、アスリートにとって大切です。
ただし、今回のような選手の場合、
筋力を上げるトレーニングはしているが、その筋力をプレー動作に変換するトレーニングが足りていない
可能性があります。
ジムで強い姿勢と、コートで使える姿勢は違う
ジムでは、バーを持って、決まったフォームで、決まった方向に力を出します。
一方、バスケでは、
相手がいる
方向が変わる
片脚になる
呼吸が乱れる
コンタクトがある
判断がある
止まる、跳ぶ、切り返すが連続する
バッシュで床を捉える
姿勢が常に変わる
このような環境で力を使います。
だから、ジムで強いことと、コートで動けることはイコールではありません。
ローバースクワットとリフティングシューズの注意点
この選手は、スクワットをローバーで行い、リフティングシューズを履き、足を割りながらしゃがっているとのことでした。
これは高重量を扱う上では合理的です。
ローバースクワットは大きな重量を扱いやすく、リフティングシューズは深くしゃがみやすくなります。
ただし、バスケ動作への変換という視点では注意が必要です。
バスケでは、バッシュを履いて、足首・股関節・胸郭を自由に使いながら動きます。
リフティングシューズで足首の可動域を補い、足を割ってしゃがむフォームばかりに慣れていると、バスケで必要な足関節背屈や股関節の多方向性、低い姿勢での呼吸が不足することがあります。
ジムでは強い。
でもコートでは重い。
このギャップが生まれることがあります。

なぜ小さい相手に下から押し上げられるのか
今回の課題のひとつに、
オフェンスで小さい相手に下から押し上げられる
というものがありました。
これは体格や筋力だけの問題ではありません。
身体が大きくても、重心が高く、骨盤が前に流れ、肋骨が開き、股関節に乗れていなければ、小さい相手に下から入られて押し上げられます。
コンタクトで負ける原因は「隙間」
コンタクトで負けるとき、多くの場合、身体のどこかに隙間があります。
肋骨と骨盤がズレている。
股関節に乗れていない。
足裏の圧が抜けている。
胸だけで相手を受けている。
腰が反っている。
膝が逃げている。
この状態だと、相手の力が身体の中に入りやすくなります。
特に小さい選手は、低い位置から相手の重心の下に入り、押し上げるのが得意です。
大きい選手が胸を張って腰を反り、重心が高くなっていると、その下に入り込まれてしまいます。
骨盤・股関節に乗れると、コンタクトは変わる
今回のセッションで呼吸と胸椎、股関節の状態が変わったことで、肋骨と骨盤が重なりやすくなりました。
肋骨と骨盤がそろう。
股関節に体重が乗る。
足裏で床を捉える。
相手の力を身体全体で受ける。
この状態になると、コンタクトで押し上げられにくくなります。
つまり、コンタクトの強さは筋力だけではありません。
姿勢、重心、股関節、腹圧、足裏の圧。
これらがそろって初めて、持っている筋力がコンタクトに変わります。
肩の痛み・脱臼癖と胸椎の関係
今回の選手には、右肩の痛みや脱臼癖もありました。
肩は上げられるけれど痛みが出る。
内旋で痛みが出る。
首も凝りやすい。
ここは慎重に見なければいけません。
脱臼癖や痛みがある場合は、医療機関や理学療法士などとの連携も必要です。
単なるストレッチや筋トレだけで解決しようとしない方がいいケースもあります。
その上で、運動連鎖として考えると、胸椎と肩はかなり関係します。
肩は肩だけで動いていない
腕を上げるときには、肩関節だけが動いているわけではありません。
肩甲上腕関節
肩甲骨
鎖骨
胸郭
胸椎
頸部
これらが連動して、腕は上がります。
胸椎が硬い。
肋骨が動かない。
肩甲骨が肋骨の上を滑らない。
巻き肩が強い。
前鋸筋や下部僧帽筋が入りにくい。
この状態で腕を上げると、肩関節そのものに負担が集中します。
つまり、肩が痛いから肩だけが悪いとは限りません。
肩の仕事を、胸郭や肩甲骨が手伝えていない可能性があります。

胸椎が動かず、肩甲骨が肋骨の上を滑れないと、腕を上げるたびに肩関節そのものが頑張りすぎます。
今日、胸椎や呼吸で肩が軽くなったとしたら、それは肩の仕事を胸郭と肩甲骨に分散できたからです。
肩の痛みを持つ選手ほど、胸椎・肋骨・肩甲骨の関係を見る必要があります。
足首の硬さと全身の重さ
この選手は、左足着地で剥離骨折の経験があり、高強度でバスケをすると足首に痛みが出るとのことでした。
これはかなり大事な情報です。
足首の硬さや過去のケガは、足首だけの問題で終わりません。
足首が硬い。
足首に痛みがある。
過去にケガをしている。
このような状態では、身体は無意識にその足に乗ることを避けることがあります。
足首が硬いと、股関節も体幹も守りに入る
足首が硬いと、深く沈めません。
すると、
膝が逃げる
股関節が固まる
骨盤がズレる
体幹が補正する
首肩が固まる
反対側に荷重が偏る
接地が重くなる
という連鎖が起きます。
つまり、足首の問題は足首だけで終わりません。
股関節にも影響します。
骨盤にも影響します。
胸郭にも影響します。
肩や首の緊張にもつながります。
バスケでは、床からの情報が非常に重要です。
足裏で床を捉えられないと、身体は上で固めてバランスを取ろうとします。
その結果、動きが重くなります。

胸椎、呼吸、骨盤、股関節、足首の連動によってバスケの動きが変わる全体像
今回の変化を、あらためて5段階で整理します。
1. 胸椎が動いた
まず、胸椎伸展によって胸郭の動きが出ました。
これにより、巻き肩や首肩の緊張が少し落ち、肋骨が動きやすくなりました。
胸椎が動くことで、肩甲骨も動きやすくなり、上半身の固さが抜けていきました。
2. 呼吸で腹圧が入りやすくなった
胸郭が動くと、横隔膜が働きやすくなります。
横隔膜が働くと、腹圧が入りやすくなります。
腹圧が入ることで、肋骨と骨盤の間に安定感が生まれ、腰や首肩で過剰に固める必要が減りました。
3. 骨盤が安定した
呼吸と腹圧によって、骨盤の位置が安定しやすくなりました。
骨盤が安定すると、股関節は自由に動けます。
逆に、骨盤が不安定な状態では、股関節は本来の力を出せません。
今回の変化では、この骨盤の安定が非常に大きかったと思います。
4. 股関節と足首が使いやすくなった
コモドストレッチやダウンドッグによって、股関節周囲と足首の状態も変わりました。
股関節が詰まりにくくなり、足裏で床を捉えやすくなったことで、ディフェンス姿勢やヒンジ動作が自然に出やすくなりました。
5. ステップ・コンタクト・ヒンジが変わった
最終的に、プレー動作が変わりました。
ディフェンスの細かいステップが軽くなる。
コンタクトでブレにくくなる。
ヒンジが自然に出る。
足が流れにくくなる。
身体全体で相手を受けられる。
これが今回の大きな変化です。
今回のセッションで感じた学び
今回のセッションは、僕自身にとっても非常に学びの多い時間でした。
改めて感じたのは、
強い選手ほど、筋力ではなく「変換能力」が課題になることがある
ということです。
筋力がない選手には、もちろん筋力をつける必要があります。
身体が細い選手には、身体を大きくする必要もあります。
出力が足りない選手には、出力を上げる必要があります。
でも、すでに筋力がある選手の場合、次に必要なのは、
その力をどこから受け取るのか
どこで逃がさないのか
どの方向へ出すのか
どのタイミングでプレーにつなげるのか
という部分です。
つまり、筋力を上げるだけではなく、筋力をスキルに変換すること。
ここに、バスケ選手に対する身体づくりの価値があると感じました。
筋力はあるのに動きが重い選手へ
もしあなたが、
筋トレはしているのに動きが重い
身体は大きくなったのにフットワークが鈍い
コンタクトで押し負ける
股関節が使えている感覚がない
ディフェンスで足が流れる
スクワットは強いのにコートで強さを感じない
肩や足首に不安がある
ジャンプやストップが思ったように変わらない
と感じているなら、筋力不足だけが原因ではないかもしれません。
胸椎。
呼吸。
肋骨。
骨盤。
股関節。
足首。
肩甲骨。
インナーユニット。
これらがつながることで、持っている筋力がプレーに変わります。
身体が変われば、プレーが変わる。
ただ鍛えるだけではなく、
力が流れる身体をつくること。
そこに、次の成長のヒントがあるかもしれません。
指導者・トレーナーとしての視点
指導する側として大切なのは、エクササイズをただ並べることではありません。
胸椎伸展をやらせる。
大腰筋を押す。
呼吸を入れる。
ストレッチをする。
それだけなら、誰でもできます。
大切なのは、
なぜそのエクササイズを行うのか。
どのプレー動作に結びつけるのか。
選手の疑問にどう答えるのか。
変化をどう言語化するのか。
今回のように、プロ選手から、
なぜ胸椎を動かしただけで股関節が使えるんですか?
なぜヒンジをしていないのにヒンジが出るんですか?
と聞かれたときに、説明できること。
これが、指導者としての信頼につながると思います。
選手は、身体の変化を感じています。
でも、その理由までは分からないことが多い。
そこで、こちらが解像度高く説明できると、
この人はただメニューを出しているのではなく、自分の身体とプレーを本当に見てくれている
と感じてもらえます。
これは、指導の価値として非常に大きいと思います。
まとめ:身体が変われば、プレーが変わる
今回のセッションで起きたことは、筋力アップではありません。
筋力が急に上がったわけではない。
スピードが急に上がったわけでもない。
新しいスキルを覚えたわけでもない。
変わったのは、身体のつながりです。
胸椎が動く。
肋骨が整う。
呼吸が入る。
腹圧が入る。
骨盤が安定する。
股関節が使える。
足首が床を捉える。
ステップが軽くなる。
コンタクトが強くなる。
ヒンジが自然に出る。
この流れが生まれたことで、プレー動作が変わりました。
強い選手ほど、筋力はあります。
でも、その筋力がコートで使えているとは限りません。
大事なのは、筋力を上げることだけではなく、
筋力をプレーに変換する身体をつくること。
今回のセッションは、改めてその重要性を感じる時間でした。
パーソナルトレーニングのご案内
ここからは、バスケットボール選手向けのパーソナルトレーニングのご案内です。
僕のパーソナルトレーニングでは、単に筋トレやストレッチを行うだけではありません。
選手一人ひとりの身体の状態を見ながら、
フットワークが重い原因
シュート動作が詰まる原因
ジャンプで力が逃げる原因
ストップで身体が流れる原因
コンタクトで押し負ける原因
股関節が使えない原因
肩や足首の不安
筋力をプレーに変換できているか
をチェックし、必要なアプローチを行います。
目的は、ただ身体を柔らかくすることでも、ただ筋力を上げることでもありません。
身体の変化を、プレーの変化につなげること。
ここを大切にしています。
こんな選手におすすめです
・筋トレしているのに動きが重い
・ディフェンスのフットワークを軽くしたい
・コンタクトで負けたくない
・ジャンプ力を上げたい
・シュート動作をスムーズにしたい
・股関節を使えるようになりたい
・ストップ動作を改善したい
・肩や足首に不安がある
・自分の身体の課題を詳しく知りたい
・今のトレーニングがプレーにつながっているか確認したい
・プロ・大学・高校レベルでさらに上を目指したい
セッションで行うこと
セッションでは、選手の状態に応じて以下のような内容を行います。
・姿勢評価
・足首・股関節・胸椎・肩関節の可動域チェック
・呼吸と腹圧のチェック
・スクワット・ヒンジ・片脚動作の評価
・ディフェンスステップの確認
・ストップ動作の確認
・ジャンプ動作の確認
・シュートやキャッチ動作との連動チェック
・必要なモビリティエクササイズ
・インナーユニット活性化
・骨盤・股関節・足部・肩甲帯の連動改善
・バスケスキルにつながる身体操作トレーニング
その場で変化を確認しながら、
「なぜ変わったのか」まで説明します。




